M-1から考えるブランディング

M-1の敗者復活戦と決勝を見たのですが、すごく面白かったです。もともとお笑いが好きで、特に漫才のネタが好きなんで、余計に楽しめました。年に一度のお祭りのような存在で毎年楽しみにしています。

 

今回のM-1の決勝を見てて、「M-1獲るのにもブランディングが必要」と感じました。コンビのブランディングが勝敗を分けたのではないかと、素人ながらに推察しました。

 

最近、ブランディングっていう言葉をよく聞くようになり、本屋にはブランディングに関連する書籍が多く並んでいます。ブランディングの専門家ではありませんが、「ブランディング」という言葉だけが一人歩きしている感覚を以前から持っていました。

 

ブランディングは「100点のモノを100点に見せる」っていうことが本質だと思います。

 

「100点のモノを100点に」の部分を言い換えると、本当の価値を、ありのままに、ということです。80点しかないモノに下駄を履かせて、100点、120点に見せるのは嘘ですし、虚偽、詐欺にあたります。逆に100点のモノを80点のように伝えてしまうともったいないですし、ブランディングができていないとなってしまいます。

 

さらに「見せる」という部分もポイントで、どう「見られる」かを前提としてブランディングするのではなく、どう「見せる」かを、まず意識することも大事だと思います。受動的ではなく、あくまでも能動的に、ということです。

 

M-1の話に戻ります。最終審査の票がかなり割れたことが物語っているように、どのコンビのネタも面白かったです。お笑い好きなだけで、詳しくもありませんし、ネタには好みもあります。あくまでブランディングの観点だけでいうと、マジカルラブリーは、まさに「100点のモノを100点に見せる」ということの結果優勝されたと思います。

 

以前、決勝で最下位に沈んでしまった時とスタイルや構成は大きく変わっていないにも関わらず、今回、優勝したということは、マジカルラブリーの100点のネタが100点として伝わったということです。

 

「見られる」ことを意識していれば、あのネタはしないでしょうし、そもそも最下位に沈んだ時点でスタイルを変えていると思います。どう「見せる」かだけを考えていたとしか思えません。

 

逆にブランディングの観点でもったいないと感じたコンビが2組います。「東京ホテイソン」と「オズワルド」です。

 

東京ホテイソンは、独特な口調のツッコミが一番おもしろいところだと思います。今回のネタでいうと、謎解きの答えである、予測できないおもしろワードを独特な口調でツッコミとして言うところです。

 

しかし、審査員のオール巨人から、「頭を使わないといけない」のように評されてしまいました。おもしろい部分がおもしろいと伝わっていないのです。世代間のギャップもあるかとは思いますが、100点のネタが100点として伝わっていません。

 

以前の東京ホテイソンは、ボケの動きに対して、ワードセンスだけの独特な口調のツッコミという感じでした。最近はこの「謎解き」のネタのように意味のない言葉を独特な口調に乗せ、違う笑いになっているなと思っていました。実際このネタも面白かったので、面白いネタが面白いと伝わっていない点が残念だな、もったいないなと感じました。

 

オズワルドは、審査員2人から真逆のことを言われていました。松本人志からは、「静かな感じで見たかった」のように評され、逆にオール巨人からは、「大きな声で」みたいなことを言われていました。

 

昨年、優勝したミルクボーイの1本目のネタのあとがオズワルドで、ミルクボーイで盛り上がった後のオズワルドの静かめなネタを松本人志は評価していました。今年は直前が大声でつっこんでいた、おいでやすこがだったため、オズワルドは静かな感じで、と松本人志は期待していたと思います。逆にオール巨人は、他のコンビと比べると物足りなく感じるから「大きな声で」と評したと思います。

 

どちらの評価も一理あると思います。ネタ順や、決勝に残った他のコンビも評価に関係してくるは当然です。ただこの真逆の評価をした2人ともが全く同じ88点という点数をつけたのです。同じ点数にも関わらず、評価が分かれるのは見せ方に問題があると思います。どう「見せる」か、ではなく、どう「見られる」か、に意識がいってたのではないか、ということです。

 

M-1は4分しか時間がなく、その中に多くのボケをいれ、なおかつ後半に畳みかけるような笑いがあるネタが評価される傾向にあります。オズワルドの今回のネタも、それに倣って去年に比べると序盤からボケが多く、後半は勢いが増し、ウケていたように思います。審査員のナイツ塙は、去年より上手くなっていると評していました。

 

審査員がいる大会なので、ある程度見られ方を意識するのは当たり前ですが、「100点を見せるネタ作り」というよりかは、「100点に見られるようなネタ作り」をしていたのではないかなと誠に勝手ながら思います。

 

たらればではありますが、もし東京ホテイソンが笑いどころをわかりやすく見せ、100点のネタを100点に見せていたら、オズワルドが、100点に見られるネタ作りではなく、オズワルドを100点に見せるネタ作りをしていたら、結果はもしかしたら変わっていたかもしれないなと思いました。